2018/04/13

シニア学生という“学びの伝道師”を活用しよう(立命館大、鳥取大)


桜もすっかり散ってしまい、タイミングがずれてしまったのですが、今年も大学の卒業式の記事がちらほらとネットにあがっていました。そのなかで、目にとまったのは高齢の社会人学生が学位を取得する記事です。いくつになっても向学心旺盛な方を見ると、何かこちらまで元気をもらいますね。

以下、朝日新聞デジタル(記事一つ目二つ目)より。


学位もたない88歳女性、縄文布研究で博士号を取得 
立命館大(京都市)は24日、縄文時代の布を研究する東海学園女子短大名誉教授の尾関清子さん(88)=名古屋市東区=に文学博士号を授与した。吉田美喜夫学長から祝福を受けた尾関さんは取材に「とても光栄で一生の思い出になった。こんな年齢で恥ずかしさもあるが、金メダルをもらったような喜び」と語った。(後略) 

松江の64歳男性が教諭の傍ら大学院、博士号取得 
小学校教諭の傍ら、大学院で学校教育実践学の研究を続けてきた松江市の荒金(あらかね)誠さん(64)が今月、博士号を取得した。テーマは教育の根源につながる哲学だ。「教師も学び続けることが大切だという信念を持ち、その生き方を貫いた」。そのことを教え子たちに伝えたいという。(後略)

過去に『定年進学のすすめ―第二の人生を充実させる大学利用法』という本を書くなど、シニア世代の社会人進学については何度となく取材をしてきました。取材のたびに強く感じたのですが、この歳になって、あえて学問の世界に飛び込む人には、その人なりの物語があるんですね。働くなかで、どうしても学びたいことがでてきたとか、ある出来事がきっかけで学問に興味を持ったとか、それら話には説得力があるし引き込まれるものがあります。

また、学ぶことに対しての苦労や楽しさの感じ方も、ものすごくビビッドですし、学ぶための努力もひと一倍やっているように感じます。そういう意味では、一つひとつの授業から受け取ることが若い学生と比べてかなり多い。月並みなたとえですけど、同じものが目に映っていても解像度が違うんだろうなと思います。

シニア世代は学びの伝道師です、大げさでなくほんとに。彼ら彼女らのメッセージは、若い学生にとって、大学で学ぶことや研究することの意味を知るために、わかりやすく、かつ説得力のある情報になります。でも、若い学生にとっては、自分の父親や母親と同じくらいの年代の人のことばは、自分ごととして受け取りにくいし、ぱっと見の印象で「自分とは関係のない情報」として遮断してしまう可能性も十分にあります。

ものすごくもったいないことです。だからたとえばですけど、若い学生がシニア世代の学生をインタビューしてパンフレットにするとか、若い学生とシニア世代の学生とで座談会をしてウェブに載せるとか。若い学生を絡めることで、シニア世代の体験や声を、若い学生に届けられないかと思うのです。大学の情報が飽和している今だからこそ、伝道師たちの貴重な生き様やことばを、うまく生かしていくべきではないでしょうか。

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