2017/02/18

受験生の心に響く奨学金制度をつくるには(慶應義塾大)


偏差値、教育内容、キャンパスライフ、取得可能資格、就職サポートなどなど、大学を選ぶうえでアピールポイントになる情報はいろいろとあります。これら情報は、時代や社会状況によってフューチャーされるものが変わっていくのですが、近年とくによく目につくようになったのは奨学金制度へのアピールではないでしょうか。

この奨学金制度について、慶應義塾大学がこれまでありそうでなかった取り組みをはじめるようで、個人的にこれはかなりいいのではないかと思っています。

以下、リセマムより。

慶應大が奨学金を一本化、返済不要「修学支援奨学金」新設 
慶應義塾大学は、家計急変や継続的な経済困窮、大規模自然災害被災者の支援を目的として、現在運用中の5つの奨学金を一本化し新たに給費型奨学金制度「修学支援奨学金」を2017年度より導入すると発表した。2017年度は100名程度を採用予定だという。(後略)

大学案内などをつくるときに、その大学の奨学金制度の情報をまとめるのですが、これが本当に細かい。さらに上記したように、近年では奨学金制度の拡充に力を入れる大学が多く、年々内容が変わったり種類が増えたりで、年を追うごとにややこしくなっている印象があります。

これはただ原稿をまとめている私ですら感じるのだから、実際に利用しようとしている受験生の場合、複数大学を見比べ、自身が該当しているかどうかを検討するわけですから、ややこしさをより実感しているはずです。こういったことを考えると、複数の奨学金制度を一本化してしまうのは正解なような気がします。

また、リセマムの記事によると、この一般化された奨学金の対象条件は「学部・大学院の学生(正規学生)で、家計の急変、大規模自然災害(激甚災害)での被災、恒常的な経済困窮を理由として修学が困難であると認められ、かつ成業の見込みがある者」とあります。これって平たく言うと、経済的に困っている学生全部です。

対象が広いため、選考では利用希望者の状況を一人ひとり把握し、判断しなくてはいけないため、職員さんの手間は増えるかもしれません。しかし、奨学金制度としては、こちらの方が断然いいのではないでしょうか。そもそも奨学金の役割というのは、学びたい意志があるのに経済的な問題で学べない人への救済措置です。なら、細かな条件をつけて、意欲があり困っている人たちを区別する必要はないように思うのです。

さらに、複数の奨学金を一本化するのは、大学側にとってもメリットがあるように思います。単純に奨学金の対象者数が合算されるため、数字としてのインパクトがでるからです。どの大学も独自の奨学金制度を持っているのが当たり前の今、他より目立つために、これは手法としてありです。

奨学金の給付対象の条件づけは、大学のとりたい学生(女子が欲しい、遠方の生徒が欲しい、クラブで実績のある生徒が欲しい etc.)ともリンクします。一本化するとこのような戦略と絡めることは難しくなるかとは思います。ですが、そもそも奨学金制度とは何ぞや、というところに立ち返ったとき、複雑さをできるだけ排除し、多くの人が利用ができる体制に整えることが自然です。それに、使いやすく、わかりやすく、対象者数も多い奨学金制度は、単純に大学にとって武器になるはずです。受験生や保護者、ついでに大学案内をつくる制作会社も喜ぶ、奨学金制度の一本化、ぜひぜひご検討ください。

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