2016/07/09

伝えるから育てるへ、ナマズに学ぶ新たな広報の役割(近大)


現在、広報活動が一番うまくいっている私立大学は近畿大学だというと、多くの人は頷いてくれるんじゃないでしょうか。さっと振り返るだけでも、近大マグロを皮切りに、英語村E3や近大水産研究所(店舗)、国際学部、またポスターやパンフレットのユニークさなんかでも話題になりました。

こういった広報のネタに事欠かない近大で、特にこのごろ注目を集めているのは近大ナマズです。このナマズの広報素材としての強さを感じさせる記事を見つけたので、今回はそれについてご紹介します。このナマズというか、ナマズの使い方にはほんと舌を巻きますね。

以下、朝日新聞デジタルより。

「近大発ナマズ」の丼、奈良キャンパスに登場 
奈良市の近畿大学奈良キャンパスの学生食堂で1日、近畿大農学部で研究している「近大発ナマズ」の丼が300食、販売された。学生限定で1日だけの販売。(後略)

記事の内容を平たく説明すると、近大の奈良キャンパスで学生を対象にした近大ナマズの試食会をした、というものです。近大ナマズ自体、世に出て1年以上が経っているし、イベント自体、あくまで学内向けのものです。しかし、それが新聞記事になっている。さらにいうと、朝日新聞以外にも、読売新聞産経新聞でも取り上げられています。

もしこれが近大でなかったら、話題になっている近大ナマズでなかったら、おそらく記事になっていないでしょう。これは逆から言うなら、近大ナマズが、というひと言だけのニュースバリューで、大手3紙に取り上げられているといえます。

近大ナマズ自体、ウナギの代用品として使えるナマズの開発であり、革新的なイノベーションとか、世紀の大発明というほどのものではないと思うんですね(スミマセン…)。おそらくは、社会的にそこまで認知はされていないけど、もっと画期的な研究というのはたくさんあるように思います。

にも関わらず、大学業界のみならず、一般の人にも、近大ナマズが大きく注目されているのは、大学広報が戦略的にこの研究成果を“育てた”からに他ありません。

それは研究成果の大々的な発表にはじまり、さまざまなイベントごとでの試食会の開催・発信、Peachの機内食に使うなどの外部との連携、広報の顔としてことあるごとに露出させるなど、地道で多角的な努力の結果です。

近大といえば、関西で有数の総合大学です。他にも推せる(ないし推すべき)広報的な素材はいっぱいあったように思います。でも、それらに見向きせず、今はコレ、とナマズに一点張りした決断力や嗅覚、戦略性というのは、ほんとにスゴいです。

そして、これら努力が実ったからこそ、ニュースでわざわざ取り上げるほどのことでもない学内での試食会ですら、多くの新聞で取り上げられるようになったわけです。ここまでいくと、近大が「近大ナマズ」と言っただけでマスコミが反応する、ある種の入れ食い状態です。

大学には、大学の魅力や教育・研究の成果を広報するという意識はあるものの、広報としてのシーズを“育てる”という意識は、まだまだ希薄なように感じます。でも、近大から次々に成功事例を見せつけられると、今後はこの発想を無視できなくなっていくのではないでしょうか。こういう新しい視点に触れると、大学広報に関わるものとしては、俄然テンションがあがるというか、面白くなってきたなぁとつくづく感じます。

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