2015/08/10

今こそアカデミックで得体の知れない大学へ


大学の広報は、さまざまな切り口、工夫で情報発信をしています。そんななか、最近にわかに増えてきているように感じるのは大学教員の知や研究成果のアピールです。

たとえば、今年リリースされ、本ブログの記事でも取り上げた京都大学の「探検!京都大学」。これには「京大先生図鑑」というコンテンツがあり、教員の研究内容や人柄について、ざっくばらんに紹介されています。

また、今年8月初旬にリニューアルした明治大学の「Meiji.net」も、教員が全面に出たサイトです。主要コンテンツである「M’s Opinion」では教員が社会への提言を語り、「動画でわかる!『●▲◆』」では動画を使って研究内容を解説。これまでの大学が運営するサイトとはひと味違う内容になっています。

こういった動きはウェブだけではありません。最近、発売された科学雑誌Newtonと近畿大学がコラボした『ニュートン別冊 近畿大学大解剖』や、東洋経済と龍谷大学がコラボした『東洋経済ACADEMIC 龍谷大学』などにも通じるところがあります。


京大の学びの魅力がつまった「探検! 京都大学」

明大の“知”の底力を感じさせる「Meiji.net」

教員の知や研究成果のアピールというと、受験生より社会に向けた広報という印象があります。実際、そういう面も多分にあるでしょう。しかし、受験生にとって意味がないのかというと、そんなことはなく、かなり効果があるように思います。

というのも、5〜6年ぐらい前まで入試広報では、大学生活が楽しいことと就職に強いこと、この二つに重点を置いたアピールが多かったのですが、昨今はプロジェクト型教育やアクティブラーニングなど“教育”に関わる取り組みを大きく取り上げる風潮が強まっています。

こういったなかで広報物をつくっていると感じるのは、教育の内容やサポートは文章と写真で伝えられるものの、“教育の質”はそうはいかないということです。

「質の高い教育を〜」と、私もよく書きはします。でも、説得力がイマイチないんですよね、自画自賛しているわけですから。そのため、大学からの発信ではなく、教員や学生に語ってもらうことで説得力を与えようとするなど、あの手この手と工夫をします。

このなかなか厄介な“教育の質”をアピールするために、教員の知や研究成果は非常に良い説得材料になります。というのも、教育というのは、極論を言ってしまえば教員と学生との対話です。相手となる教員がどんな知識を持ち、どんな成果を挙げているのか、平たく言えばこの教員がいかにスゴいのかがわかれば、“教育の質”は自ずと伝わってくるからです。

さらに、紹介された研究成果が、受験生にとって直接関わり合いのない分野のものであったとしても、一定の広報効果を見込むことができます。その好例が、今、猛烈に志望者を増やしている近畿大学です。

近大の知名度を上げるきっかけになったのは、言わずと知れた近大マグロです。しかし、農学部水産学科のみ志望者が増えたのかというとそうではなく、大学全体の志望者が増えました。これは近大マグロを通じて、近大全体の研究力(そして教育力)が高いというイメージが受験生に広がったからです。

最後に、これは受験生へのメリットというより、私の単なる願望なのですが、この大学には何かがある。そう感じさせてくれる“アカデミックな得体の知れなさ”こそが大学の一番の魅力だと私は思っています。そして、この得体の知れなさをつくりだすのは、他でもなく教員たちのさまざまな知や研究成果です。

今、“教育”が大学広報の主軸に戻り、教員の知や研究成果の広報的価値がこれまでになく高まっています。古くはレジャーランド、少し前だと職業訓練校と、大学は揶揄され続けてきました。これらイメージを払拭し、巨大で、すごくて、ワクワクする、そんな大学のイメージを社会に広めるのに今は絶好のタイミングです。だからぜひ、たくさんの大学に知と研究成果を積極的に発信してもらいたい、本当に勝手ですけど、そんなことを願っているのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿