2014/05/04

研究者の卵、教育者の卵(阪大)


大学進学が買い手市場になり、授業は役に立つのはもちろん、面白くなくてはいけないという風潮がすっかり定着してきました。でも、大学教員は自分の専門分野についてはずっと勉強してきたものの、教育方法については誰かに教えてもらってきたわけではありません。

そう思うと、際限のない学生や保護者の要望に、大学教員が応えていくのはなかなかつらいものがあります。大阪大学ではこういった現状を踏まえ、変えていくために、面白い取り組みをはじめたようです。


以下、YOMIURI ONLINEより。

  
大学教員の“卵”育てます…阪大が新授業 
大学教員を目指す学生の教育力を養おうと、大阪大が今月から、大学教員の心構えや授業法などを教える授業を始める。「大学の授業はつまらない」と言われる現状を変えるため、早くから意識の高い人材を育て、教育の質の確保につなげる狙い。全学部生が対象で、全国初の取り組みという。(後略)


リンク先の記事に「小中高の教員になるには教員免許状が必要だが、大学教員には不要」とありますが、まさにそうですよね。教育系学部だと“教える”ことについて4年間学び、その上で質を保証する免許状を手に入れます。でも、大学教員には一切こういったものがありません。

さらに言うと、教育系学部に行く人たちは“先生”になりたいと思い、進学してきた人たちです。でも、大学教員は自分が専門とする分野をとことん突き詰めたいと思って研究室に残った人たちなわけで、教育に対するモチベーションがまったく違います。

しかし、現在、多くの大学(とくに私立大学)は研究機関より教育機関としての役割を社会から求められており、受験生や保護者も当然そっちを注目しています。この現状と大学教員の実態の間に起こるジレンマを解消するために、阪大の取り組みはとても意義があるのではないでしょうか。

また、この記事だけではよくわからないのですが、阪大の取り組みが指導法を教えるだけでなく、教育のやりがいについても伝えられるものでれば、なおいっそう魅力的だと思います。

教育について学んだことがない人は、人の成長に関われる喜びや楽しさといった教育ならではのやりがいを実感したことがない可能性があります。これらはテキストで理解するものではなく、実体験から学ぶものです。もし今回の取り組みからこれらを感じ取れるものなら、学生たちがイメージする大学教員像を大きく変える貴重な場になるはずです。

教育は人対人の密度の濃い関わりの中でつくられていくものです。教える側も、教えられる側も、相当な時間とエネルギーを使うし、教えられる側にとっては一生に関わってくることだってあります。

考えてみると、これほど重要かつ大変なものなのに、すごくフリーハンドで営われているんですよね。だからこそ多様性がでて面白いというとらえ方もできますが、もうちょっと制度的なものがあってもいいんじゃないかな、という気がします。

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